クラウドソーシングを利用して納品した記事の著作権は、ワーカーとクライアントのどちらに帰属するかご存じですか?
あらかじめ取り決めた場合は別にして、実は各社の対応はさまざま。
検収後でもワーカーに帰属したままだったり、自動的にクライアントへ譲渡されたりと、クラウドソーシングによって対応が異なるのです。
そこで今回は、多くのWebライターやフリーランスが利用している大手クラウドソーシング「クラウドワークス」と「ランサーズ」の規約を確認。
直接に問い合わせて確証も得ましたので、記事の著作権譲渡でトラブルを防ぎたい方は参考にしてみてください。
記事の著作権は誰に帰属する?
記事の著作権については本来、クライアントとワーカー双方で取り決める必要があります。著作権譲渡契約書を交わし、納品後はクライアントへ譲渡されるのが一般的です。
ただし、企業やWeb制作会社との委託契約では常識なのに対して、クラウドソーシングでは取り決めないケースが少なくありません。
なぜなら、クライアントとワーカーともに、納品後は自動的にクライアントへ譲渡されると思っているから。
以前なら正しかったのですが、規定を改定したクラウドソーシングもあり、必ずしもそうとは限らないのです。
では、大手クラウドソーシング「クラウドワークス」と「ランサーズ」における、記事の著作権譲渡に関する規定をみていきましょう。
クラウドワークスにおける記事の著作権譲渡
クラウドソーシング大手「クラウドワークス」の規約では、著作権譲渡について以下のように定めています。
著作権の取り扱いについて双方で取り決めがなければ、納品した記事の著作権はワーカー側に帰属したままだとしています。第5節 会員の義務及び責任
第17条 本取引の成果物等に関する知的財産権及びその利用
1. ワーカーがクライアントに対して納品した成果物に関する著作権等の知的財産権
(著作権法第27条及び第28条の権利を含みます。)は、本取引によって譲渡がなされ
ない限り、作成した会員自身に帰属するものとします。
なお、本取引の中において別途取決めがある場合は、同取決めが優先されるものとし
ます。引用:クラウドワークス利用規約
規約を読んだだけでは心配だったので、クラウドワークスに直接問い合わせて確認しました。
- 事前に取り決めない限り、検収後であっても自動的にクライアントへ著作権が譲渡されることはない、という理解で間違いありませんか?
-
クライアント様へ知的財産権が自動的に譲渡されるものではなく、二者間で知的財産権の譲渡に関する取り決めがない場合には、検収完了後も引き続きワーカー様へ帰属するものとなります。
ご契約の際には必ず双方で「著作権譲渡」のタイミングについてもお話合いくださいますようお願いします。
著作権の譲渡についてお話合いされない状態では、提案物の無断使用等「著作権侵害」の恐れもありますので、必ず双方同意いただきますようお願いします。
「二者間で知的財産権の譲渡に関する取り決めがない場合には、 検収完了後も引き続き ワーカー様へ帰属する 」とのこと。
明確にお答えいただきました。
クラウドソーシングの取引では、事前に著作権譲渡について取り決めを交わさない場合が多いと思います。
けれども、本来は直接契約と同じように著作権譲渡契約書を交わす必要があるわけですね。
上記の規約は2022年11月時点です。今後改定される場合もあるので、交渉の材料にする際は公式HPで詳細を確認してください。
ランサーズにおける記事の著作権譲渡
同じく大手のクラウドソーシング「ランサーズ」の公式ページをチェックすると、以下の記述がありました。
第16条 本サイトでの成果物に対する著作権の取扱い
ランサー(チーム制において、メンバーがリーダーに提案する成果物についてはメンバーをいい、リーダーがクライアントに提案する成果物についてはリーダーをいいます。本条において以下同じ。)が提案した成果物や、本サイトで会員が作成したプロフィールの著作権等の権利(著作権法第27条、第28条の権利を含みます。以下、著作権に関して同様とします。)は、会員間取引によって譲渡されない限り、作成した会員(チーム制において、メンバーがリーダーに提案する成果物についてはメンバーをいい、リーダーがクライアントに提案する成果物についてはリーダーをいいます。)自身に帰属するものとします。引用:ランサーズ利用規約
「会員間取引によって譲渡されない限り……」とあり、一見するとワーカーに帰属すると解釈できそうですが、規約らしいわかりにくい文章ですね。
そこで、単刀直入に聞きました。
- クラウドワークス同様、双方で取り決めしない限りは、検収後に自動で著作権が譲渡されることはないという理解でよいですか?
-
ご確認いただきました規約に関しまして、著作権がランサー様に帰属する条件は、記載されております通り「会員間取引によって譲渡されない限り」としております。
このため、マイチームで提案した成果物で支払い確定を受けた場合には、その成果物の著作権などの権利は、支払い確定とともにクライアント様へ譲渡していただくこととなります。
「会員間取引によって譲渡されない限り、 納品物は支払い確定とともにクライアント様へ譲渡 」とのこと。
クラウドワークスとは、まったく真逆の回答でした。
どうやら、規約の「会員間取引によって譲渡されない限り」の「譲渡」とは、著作権のことではなく納品物を指すようです。
すなわち、「納品するまでの著作権はワーカーにあり、納品後はクライアントへ自動的に譲渡される」というわけです。
規約ならではのわかりにくさでした。
各クラウドソーシングの規約を確認する際は、あわせて問い合わせておいたほうがよさそうです。
上記の規約は2022年11月時点です。今後改定される場合もあるので、交渉の材料にする際は公式HPで詳細を確認してください。
クラウドワークスなら低単価なテストライティングに対抗できる
クラウドソーシングの取引では、低単価なテストライティングで記事を集める悪質な手口が横行しています。
テストと称して極端に安い単価で記事を納品させて、すべて不合格とする手口です。
クラウドワークスでの記事執筆プロジェクトなら、事前に取り決めていない限り自動的に著作権がクライアントへ譲渡されることはありません。
つまり、テストライティングで提出した記事の著作権を主張できるのです。
不採用の連絡を受けて納得がいかないのなら、以下のように連絡してはどうでしょうか。
テスト不合格とのことですので、記事は破棄してください。せっかく一生懸命に書いた記事で無駄にしたくはないので、自分のブログに投稿します。
テストライティングですから、不採用なら破棄されるのが当然です。
「もし使用されるなら、正規の報酬をお支払いください」と、伝えてみてもよいでしょう。
または、応募する際にあらかじめ「テスト不合格だった場合は、記事の著作権を譲渡しません」と、伝えておくのも方法のひとつです。
搾取する気満々のクライアントなら「では結構です」と、断ってくると思われますが。
なお、なかには「検収された記事の著作権はクライアント側に移転する」と、誤った情報で反論してくるケースも考えられます。
そもそも、テストとして受け取った記事の著作権を主張するのはおかしな行為ですが、その際はクラウドワークスの規約を教えてあげましょう。
Webライターを搾取するひどい案件を見極めたいなら、以下の記事も参考にしてみてください。
まとめ:記事の著作権譲渡に関する規約を確認しておこう
実は、クラウドワークスの規約は2020年10月に改定して上記の内容になりました。
以前は「本取引の業務が完了した段階で著作権はクライアントに移転・帰属する」と、まったく真逆の内容だったのです。
ひどくワーカーに不利な規約でしたが、ワーカーとクライアントが対応に話し合える環境になっています。
トラブルや搾取されるのを防ぐためにも、各クラウドソーシングの著作権譲渡に関する規定を確認しておくのが重要です。
いずれはランサーズをはじめ各クラウドソーシングの規約も改定されて、ワーカーがより働きやすくなる環境が整うのを期待しましょう。
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