Webライターやフリーランスであれば、自宅で仕事をしているケースがほとんどではないでしょうか?
電気代や家賃における事業利用分を経費に計上するために必要なのが「家事按分」です。
生活費と事業費用を混同しやすい個人事業主必須の経費計上方法であり、Webライターやフリーランスの節税対策に役立ちます。
今回は、元経理担当のわたしが、家事按分の比率計算方法を解説。
実際に利用しているクラウド会計ソフトを使った入力例も紹介します。
Webライターをはじめたばかり方や経理に不安を持っている方は、参考にしてみてください。
家事按分とは
家事按分(かじあんぶん)とは、生活費と事業費用を混同しやすいフリーランスのために設けている経費計上方法です。
たとえば、以下のような生活費で支払った料金の一部を経費にできます。
- 家賃
- 電気料金
- 通信費
- 自動車関連費
自宅で仕事をしているWebライターの場合、生活費から支払っている電気代のどの程度が仕事で使用しているぶんなのか、そのままではわかりません。
自宅の電気代や家賃などにおける、事業費用の比率を計算して経費計上するのが家事按分。
本来、自宅の電気代や家賃は生活費ではあるものの、実際に仕事で使用している比率を計算すれば経費として認められるわけです。
ただし、仕事で使用している部屋の総面積に対する割合や作業時間、作業日数などは人によってさまざまであり、自分で計算しなけれ経費にできません。
副業でも利用可能
家事按分はそもそも個人事業主のために設けていますが、昨今急増している副業でも利用可能です。
副業Webライターとして報酬を得ているなら、仕事しているぶんはしっかり経費計上しましょう。
ただし、経費計上している根拠を説明できるように、事業利用比率を計算しなければなりません。
たとえば、本業の仕事から帰宅して夜に2時間ほどWebライターとして活動している場合、事業利用比率を30%、40%などと設定するのは不自然です。
説明を求められた際に納得できる、現実的な数字になるよう事業利用比率を設定しましょう。
仕訳の考え方
仕訳としては、まずは通常通りに支払った時点で経費として計上します。
借方 | 貸方 | ||
水道光熱費 | 10,000円 | 事業主借 | 10,000円 |
確定申告時に家事按分で設定した比率ぶんを経費として残し、除外した分を事業主貸に振り分けます。
水道光熱費が10,000円で家事按分を35%とした場合、6,500円を決算時に除外して事業主貸に振り分けるわけです。
借方 | 貸方 | ||
事業主貸 | 6,500円 | 水道光熱費 | 6,500円 |
ただし、上記のような仕訳の仕組みを理解せずとも、クラウド会計ソフトを使用すれば自動的に振り分けてくれます。
簿記の知識がなくても型を知っておけば対応できるので、無理に覚える必要はありません。
家事按分の比率計算
Webライター・フリーランスが家事按分を利用する項目には、おもに以下の5つがあります。
では、それぞれの家事按分の考え方と計算方法を解説します。
家賃
家賃の家事按分は、仕事で使用している部屋の広さ「㎡」で割合を算出します。
たとえば、広さ80㎡のマンションを賃貸し、うち10㎡の1室で仕事を使用している場合、仕事での使用割合は12.5%です。
1ヶ月の家賃が80,000円なら、以下の計算になります。
- 1ヶ月の家賃:80,000円
- 事業利用比率:業務専有面積10㎡÷住宅総面積80㎡=12.5%
1ヶ月の経費:家賃80,000円×12.5%=10,000円
なお、住宅ローンは経費として認められないのが一般的です。
電気料金
電気代の家事按分では、以下の点を考慮しながら比率を計算します。
- 部屋の広さ
- 作業時間
- 作業日数
- コンセント
上記のいずれかに絞って計算したり、組み合わせたりする方法があります。
以下の条件を例として、作業日数と作業時間を組み合わせて計算してみましょう。
- 作業時間:1日8時間
- 作業日数:1ヶ月20日間
- 電気代:1ヶ月10,000円
- 1日あたりの作業時間割合:8時間÷1日24時間=33%
- 1ヶ月あたりの作業日数割合:20日間÷1ヶ月30日=66%
- 事業利用比率:33%×66%=21.78%
1ヶ月の経費:10,000円×21.78%=2,178円
通信費
通信費は、たとえば以下のような経費を家事按分できます。
- スマートフォンの月額利用金料金
- インターネット回線の月額利用料金
- プロバイダーの月額利用料金
上記を経費として計上するには、プライベート分と仕事分の比率を計算する必要があります。
ただし、比率の根拠を明確に説明できなければ、税務署に否定される可能性があり注意が必要です。
心配なら、プライベート用と仕事用に分けることも検討してみましょう。
仮に、上記の電気代と同じように部屋の広さで計算すれば、以下となります。
- 1ヶ月のスマートフォン代:5,000円
- 事業利用比率:業務専有面積10㎡÷住宅総面積80㎡=12.5%
1ヶ月の経費:スマートフォン代5,000円×12.5%=625円
自動車関連費用
車を取材など事業で使用すれば、以下の関連費用を家事按分で経費計上できます。
- 自動車の購入代金
- 駐車場費用
- ガソリン代
- 自動車税
- 車検代
ただし、法人なら全額経費計上できますが、フリーランスの自動車関連費用はプライベートとの区別が難しく、税務署にマークされやすいので注意が必要です。
一般的に「仕事で使用した際の走行距離」で算出します。
しっかり記録をとって、明確に根拠を示せるようにしましょう。
たとえば、取材で1ヶ月100km走行して1ヶ月の総走行距離が500km、支払ったガソリン代が5,000円なら以下のように計算します。
- 1ヶ月のガソリン代:5,000円
- 事業利用比率:事業使用走行距離100km÷総走行距離500km=20%
1ヶ月の経費:ガソリン代5,000円×20%=1,000円
ガス・水道代
自宅の電気代は家事按分で経費計上できるのに対して、ガス代と水道代は否認される可能性があります。
おもにパソコンで仕事しているWebライターのガスや水道の使用は、仕事と無関係とされる可能性が高く、安易に家事按分で経費計上するのは危険です。
ガスや水道を経費計上しないと事業に支障できるようなケースなら、明確に根拠を説明できるようにしておきましょう。
クラウド会計ソフトを使った家事按分の入力例
では、家事按分についてわかったところで、実際にクラウド会計ソフトを使って家事按分を仕訳する方法をみていきましょう。
今回は、わたしも使用しているクラウド会計ソフトを使って、電気代を例に説明します。
補助科目を追加する
まず、按分比率の設定と仕訳を入力する前に「補助科目」を追加しましょう。
勘定科目「水道光熱費」に電気代の家事按分であることがわかるように、任意の補助科目「電気代按分」を追加します。
左サイドバーの「各種設定」にカーソルを当てて「勘定科目」を開きましょう。
画面左上の「損益計算書」を選択します。
画面の一番下にある「補助科目追加」をクリックします。
水道光熱費を選択して、補助科目に「電気代按分」を入力して登録ボタンをクリックします。
「電気代按分」でなくても、自分でわかりやすい名前をつけましょう。
補助科目を追加しなくても設定できますが、同じ「水道光熱費」でガスや水道代を家事按分したい場合に困ります。
家事按分の比率を入力
水道光熱費の電気代按分で計算した比率を入力しましょう。
今回は、わたしが副業時代に使用していた「10.15%」を入力する例で説明します。
まず左サイドバーの「決算・申告」にカーソルを当てて「家事按分」を選択します。
「家事按分設定の作成」をクリックします。
勘定科目で「水道光熱費」を選択し、補助科目で追加した「電気代按分」を選択します。
「事業用比率」の欄に計算した数値を入力し、登録ボタンをクリックすれば設定完了です。
電気代を仕訳
「振替伝票入力」で、領収書を見ながら日付・金額・摘要に入力します。
「借方」の勘定科目で水道光熱費を選択し、下の欄の補助科目で「電気代按分」を選択しましょう。
電気代を家事按分するわけですから、生活費からの支出になります。
「貸方」の勘定科目は「事業主借」選びましょう。
事業主勘定は、フリーランス・個人事業主専用の勘定科目です。
経費を生活費から支払う場合や、事業用銀行口座から現金を引き出す際などで使用します。
ほかの勘定科目と異なり自ら反対仕訳する必要がないので、とりあえずは「借方に事業主貸」「貸方に事業主貸」を入力すると覚えておけばよいでしょう。
事業主勘定について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
決算仕訳に登録
左サイドバーの「決算・申告」から「家事按分」に戻れば、設定した事業利用比率に基づいて仕訳した内容が反映されています。
「仕訳登録」ボタンをクリックすれば、決算仕訳されてすべて完了です。
家事按分した電気代の10.15%が経費に計上され、除外分は決算仕訳で自動的に事業主貸に振り分けられます。
今回は説明するために1ヶ月分だけ仕訳登録しましたが、通常は確定申告時に1年分をまとめて登録すれば問題ありません。
まとめ:家事按分では計算の根拠が重要
家事按分では「なぜそのような計算になったか」の根拠が重要です。
万一税務調査が入った際に否認されると面倒なので、しっかり説明できるようにしておきましょう。